“名選手名コーチならず” 良く知られたフレーズである。私自身、スポーツチームの運営に長年携わってきた。そこで感じていたことは、まさしく選手としてのスキルとコーチのスキルは別物ということである。選手時代は頑張っている背中を見せるだけで他のメンバーはついてきてくれるが、コーチになれば背中を見せるだけでは人はついてこない。
実際過去にそのような選手の話を聞いたことがある。彼はキャプテンとしては抜群の影響力を持っており、引退してコーチになった2~3年はまだメンバーからの人望もあった。しかし、彼の選手時代の活躍を知らない若い選手が増えてくると問題が発生したのである。彼のコーチングに対し、「一方的で理解できない」「何かあるとすぐ監督や会社のせいにする」等々、チーム内から噴出してきた。原因は“これくらいはできて当たり前”という過去の自分のレベルで人を見てしまう人の見方と“監督や会社のせいにする”責任感の無さにあった。このような例はスポーツの世界だけでなく、企業のマネジメントにおいても多く存在する。
ではどうしたら解決できるのか?私が考える答えは次の3つである。
1、一人ひとりの違いを受け入れること
人はそれぞれ考え方、価値観、持っているスキル、才能‥、は違うのである。チームをひとくくりのまとまりで見るのではなく、違いを認め、個をきちんと観ることである。
2、自分の言葉に責任を持って語ること
最悪なのは「上司(会社)が‥と言っているからやれ」と他責にすることである。メンバーの成長を信じ、自分の言葉で「こうやろう」と熱く語りかけることである。
3、教えすぎないこと
相手の経験やスキルレベルに応じて、「教えて、やらせる」だけでなく、「考えさせて自主的に行動に移させる」コーチングをやっていくことである。
(高山有朋)