自分が思っていることや考えていることを相手に理解してもらうには膨大なエネルギーが必要である。日本には昔から「以心伝心」という言葉があるように多くを語らずとも理解してくれるだろう、といった風潮がある、しかし、変化が激しくスピード感がある現代のビジネス社会においては、言いたいことが正確に相手に伝わらないと成果にはつながらない。伝えないとコミュニケーションは成り立たないのである。
上司の話、部下の報告、結婚式のスピーチといった場面で「結局何が言いたいのだろう」と感じた経験がある方は多いと思う。おそらく話し手には「言いたいことや伝えたいこと」がたくさんあり、次々とテーマが浮かんでくるのだと思われる。その結果、話の展開が組み立てられず、時間がオーバーしたうえに聞き手には伝わっていない、という事態が起こってしまう。
特にビジネスの場面ではスピードと分かりやすさが要求される。話し手は「聞き手が聞きたいであろうテーマ」に絞って自分の考えを素早く整理し、相手に分かりやすく伝えることが求められる。素早く考えを整理するためには、話す内容を「3つ」に絞り込む方法が有効である。例を挙げると「過去・現在・未来」「東京・大阪・福岡」「本社・現場・お客さま」の様に伝えたいことを関連付けて「3つ」にまとめる、といった具合である。1分間で報告するあるいはエレベーターが到着するまでに報告を完了する場合などにも有効である。また、分かりやすく話すには、「聞き手は誰か、何が聞きたいのか」という相手のことを考えたうえでのテーマを選ぶこと、「何について話すのか」が明確に伝わるように「導入・本論・結び」といったように展開を組み立てて話す、といった工夫することが重要である。ただ、その場で思いついたことを話すのではなく、予め構成をした上で話をすると、聞き手にとって分かりやすくかつ印象に残りやすいインパクトのある話ができるようになる。(上記については「考えをまとめるスキル説得するスキル」で詳細にお伝えしているので参考にしていただきたい。)
聞き手に自分の考えや想いを伝えるためには、話の構成や話し方に工夫を加えること、練習すること、そして何よりも聞き手のことを考えることが欠かせない。(川口 和華)