「穀霊、地霊、祖霊」

  師事している田口佳史氏(東洋思想の大家)の講義で次のような話がありました。
東南アジアの留学生から、“日本の田圃は、どうしてこんなに美しいのですか?私の国でもコメを作っていますが、適当に植えていてもそれなりに収穫できますし、これほど田圃を綺麗にする必要はないのじゃないですか?”と質問を受けたそうです。これに対する田口先生の答えは“古代より日本では、米つくりは神さまと共に行っているのです。従って、田圃には「田の神さま」、社には「お稲荷さま」が祀ってある。神さまは、綺麗な所にしか降りてこないのです。だから、田圃を綺麗にして心を込めて作るのです”、と。
  田口先生からこの話を聞いて以来、私のコメ作りが変わりました。単なる農作業ではなく、神さまとの共作。田圃に神さまに来てもらうために、田の草取りも畔草刈りも頻繁にして、美しいものにしなければなりません。そして、一つひとつ丁寧に心を込めて。
  「田の神さま」は、3つの霊を宿しています。まずは文字通りの「穀霊」、農耕の神さま。次にこの土地に根づいている「地霊」。そして「祖霊」です。「祖霊」は、先祖代々ずっと耕しつづけてくれたからこそ、今の田圃が今の自分たちがあるという、感謝です。
  因みに伊勢神宮の内宮は祖霊の「天照大神」と地霊をお祀りし、外宮は穀霊である「豊受大神」を祀っている。

  我が家の一角に「お稲荷さま」があります。この神さまの語源は「稲成り」、稲が生育することであり、その象徴が狐であるのは、尻尾がたわわに実った稲穂に似てるからだそうです。

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