30年ほど前、岡山に住む学生時代の友人の案内で井原市の「平櫛田中美術館」を訪ねた。その時、ある言葉が目に入り、その色紙を買って今自室に飾っている。「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」という額である。平櫛田中は、日本を代表する彫刻家の一人で、107歳まで生きた。
「人間は思ったら直ちに実行せねばいけない。考えただけではやったことにもならず、消えてしまうものである。『いまやらねば、いつできる』である。そして、『わしがやらねばたれがやる』と自分で覚悟すること。これが人間の努力を確実にするものである。」と田中は語っている。
松下幸之助がある縁で平櫛田中に会った、その時に「松下さん、六十、七十ははなたれ小僧、男ざかりは百からですよ」と言われたそうだ。松下は語っている。
『お目にかかったときに、ずいぶん気持ちの若い人だということは感じていたものの、百歳を越えてなお五十年分の木彫用木材を積んで制作意欲を持ち続けておられるということからすると、「男ざかりは百歳から」と言われたのも、口先だけのことではない。やはりほんとうに自分の芸術を完成させるには、あと五十年は木を彫り続けなければならないという執念とも言える強い思いを持っておられるのだ』。自分より二十二歳も年上の平櫛さんが、今なおみずからの仕事に旺盛に取り組む姿勢に感動し、大きな励ましを受けたのです。考えてみれば、百歳を越えてもあれだけお元気で若々しかったのは、常に夢や目標を持ち、それに向かって『今やらねばいつできる。おれがやらねばだれがやる』と、今という一瞬を精いっぱい生きておられたからだという気がする」と。
人間いたずらに多事、人生いたずらに年をとる、いまやらねばいつできる、わしがやらねばたれがやる・・・。
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