Google社は、2012年に生産性向上計画に着手した。この計画は、アリストテレスの言葉「全体は部分の総和に勝る」にちなみ、「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」と名付けられた。Google社内には数百のチームがあるが、生産性の高いチームもあれば、そうでないチームもある。それを分析し、生産性の高い働き方を提案するのが、このプロジェクト・アリストテレスの目的であった。
その結果、リサーチチームは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めた。チームの効果性に影響する因子は、強い順に次のように紹介されている。
・心理的安全性:心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、
無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味する。心理的
安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていない。自分の過ちを認めたり、質問をした
り、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地がある。
・相互信頼: 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げる(これに対し、相互信頼の低いチームのメン
バーは責任を転嫁する)。
・構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動が
もたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となる。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定
することもできるが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければならない。Google では、短期的な目標と長期
的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われている。
・仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要がある。仕事の
意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまであ
る。
・インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことである。個人の仕事が組織
の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなる。
心理的安全性とは、「一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態」のことを指し、そのようなチーム環境を作るためには、他者への理解や心遣い、共感が必要であるという。「心理的安全性」が成功への最も重要な因子とは、プロジェクト・アリストテレス、面白い結果を出したものである。
ラーニング・システムズ
高原コンサルティングオフィス
高原 要次