2018年5月 ”新人を伸ばす営業コーチング”

 2018年度、数社の新入社員研修をお手伝いさせて頂いたが、すでに1か月が経過した。5月の連休明けに配属の企業もあれば、すでに入社時研修を終了し、現場に出ている新入社員もいる。研修を実施して感じた印象は3つ、①大変素直で与えられた課題には真剣に取り組みアウトプットができる、②社会人としての意識(心構え)も高く、学ぶ意欲も高い。③早く現場に出て成果を出したいという意欲が感じられる点であった。真面目に素直に課題に取組む姿勢は、継続して欲しいと思うが、気になる点は、失敗する勇気があるか(行動できるか)、今後出てくるであろう理不尽な出来事にも自分なりに上手く解釈して対処できるか、という点であるが、何しろこれからの成長が楽しみであり、行動して多くの経験を積むことが大切である。

 街角には、新人営業の姿も目立ち始め、先輩・上司との同行訪問の姿やすでに単独での飛込み訪問を行っている企業もある。新人の育て方や方針もそれぞれであると感じる。しかし、配属先の先輩や上司によって、育て方や指導の仕方にバラつきがあっては組織としてはやや問題である。そこには育成の目的やゴール(目標)、修得する知識やスキルが計画的に落とし込まれていなければならないし、組織的にいわゆる「標準化」されたもの(型)が必要であろう。俗にいう先輩・上司の経験や勘に頼る指導はもはや通用せず、新人には伝わらなくなっている。

 そこで、新人への関わり方の「型」の1つとして“コーチング”がある。コーチングの定義も様々であるが、“新人の目標やゴールに向けて支援すること”であり、勇気づけ、質問によって気づきと新人の自発的な行動を促す手法である。

 例えば営業の場面では、訪問結果を確認する場合「報告のさせ方と指示の仕方」がある。同行訪問と担当引継が完了すれば、すぐに一人での訪問活動が始まると思うが、訪問結果について確認する場合、新人の成果につながる(成長に影響を与える)3つのポイントがある。①報告では、状況の確認(事実を本人とお客様の言動から判断する)②上手くいったと判断した場合の次の具体的な指示、③上手くいかなかったと判断した場合の次の具体的な指示、である。従って、上司の最も重要なスキルは「質問」となる。コントロール型で上司の言いたいこと、思い通りのことを指示・徹底させる、叱責することは簡単かもしれないが、新人の気づきを促し、状況判断力を向上させ、自ら行動・成長できるようにするためには、質問の手法、つまりコーチングの関わり方が欠かせない。段階として、配属されたばかりのこの時期は「コントロール型」の指示の割合が多いことは当然であるが、徐々に「パートナーシップ型」→コーチングの関わり方の割合を増やし、目的と状況に応じて2つの型をバランスよく活用することが、新人を伸ばしていく上で望ましいと言える。

 先日、弊社でも2011年のラーニング・フォーラムで基調講演をお願いした衣笠祥雄さんが突然逝去された。現ソフトバンク達川ヘッドコーチが鉄人衣笠さんに諭された内容が、「キャッチャーを叱るなよ。今の選手は怒ったら伸びんぞ。辛抱せいよ。」であった。

 

                                                      (パフォーマンス・コンサルタント 菊池政司)