田んぼ一面に広がるれんげ草を、美しく見られるのは春の時期、それも4月~5月にかけてでしょうか。子供の頃、近くにれんげ畑があったので、友達と毎日のようにその中を駆け回ったり、寝転んだり、また花を摘んで蜜を吸って遊んだ記憶があります。楽しかった幼い頃の思い出と情景(れんげ畑)が、今では私の生活の一部になっているなんて思いもよらない事でした。
我が家では、れんげ草を利用して「れんげ農法」という栽培方法でお米を作っています。
「れんげ農法」は苗を植える前にれんげ畑にして、窒素を土壌に発生させ、それを有機肥料として利用するものです。「土」が活性化され、稲を自然のまま、元気に育てることが出来るのです。ですから我が家の田んぼも、毎年稲刈りが終わって10月頃れんげの種を撒き、翌年春になって花が咲きだしたら、田んぼ一面に咲く頃れんげ草を土に鋤きこみます。田植え1ヶ月前(4月末)の作業です。
れんげ草はマメ科のゲンゲ属に分類される越年草で中国原産です。我が国へは17世紀ごろに渡来し、明治以降になって急速に広まりました。花の特徴は、茎先に紅紫色の蝶形をした花が輪になってつきます。れんげ草は空中の窒素を根に取り込んで貯め込む力があり、稲が必要とする窒素成分を含んだ元肥となり、土壌に力がつき、強い稲をつくるそうです。またマメ科の植物なので、根のまわりに「根粒(こんりゅう)」と言うこぶがあります。このこぶの中には「根粒菌」という細菌がすんでいて、空気中の窒素を植物が使える形に変え、それを植物に与えるのです。
また緑肥(りょくひ)に使う植物は他に、れんげ草と同じマメ科のクローバーがあります。
‘幸運の四つ葉’で有名です。
田んぼが何故れんげ畑になっているかという理由は、お米つくりをするようになって分かったことですが、お米を作るのに大切な役わりがあるのを知ると、収穫したお米がよりいっそう美味しいと感じますし、実際「れんげ米」で炊いたご飯はとても美味しいです。
紅紫色のれんげ畑で、私が小さい頃遊んだように孫たちを同じように遊ばせたいですね。こどもにとっては大草原でしょうから喜ぶはずです。そして美味しいお米作りに彼らをかかわらせたいです。
(原口佳子)