お地蔵さんは、町と村の境界、街道の入り口でよく見かけますが、私が住んでいる家のすぐ近くにもお地蔵さまがいます。今から75年ほど前、子供たちの火遊びが原因で、昔の我が家を含め、何件かが焼けました。ちょうど風が強い日で、風上からあっと言う間に火が広がったそうです。亡くなった人はいませんでしたが、子供や村を守るために置かれたという事です。
毎月1日に、ご近所のおばあちゃん達に混じって、お参りに行きます。先ず、祠(ほこら)の周りをほうきで掃き、花の水を替え、綺麗にした後、お供えをします。次にお賽銭を入れ線香を立て、おばあちゃんの後に続いてお経を唱えるのです。「オンカカカビサンマエイカ・・・・」という真言(仏の言葉で類まれな尊いお地蔵さま、という意味だそうです)と、般若心経を唱えています。私は未だに上手に唱えることが出来ませんが、それぞれ個人のお願い事と感謝の気持ちを伝えます。お地蔵さまのお顔はいつも微笑んでいるような気がします。
お地蔵さまと親しまれている地蔵菩薩は、「釈尊入滅後、時代の救世主である弥勒菩薩が56億7000万年の後に出世するまでの間をつなぐ仏様」らしいのです。ですから、地蔵菩薩は、来世で浄土を約束する阿弥陀如来や、将来ずっと先に我々を導いてくれる弥勒菩薩と違って、今 この世でもだえ苦しんでいる非力な我々を助けてくれる仏なのです。
道端のお地蔵さまは、旅人が道に迷わないように見守って下さいます。またお地蔵さまは、子供と関わり深く、子供を守る仏様として信仰の対象になっているようです。ですから自分の子供が元気に育つようにと、お地蔵さまによだれかけを奉納するのはそのためで、丸い頭に頭巾をかぶせてもらっているお地蔵さんもいます。
毎月1回ですが、火事があった5月には、お弁当と持ち寄りのお茶とお菓子で話が弾みます。おばあちゃんたちの時代から、子供を始め、皆の幸せを何十年も祈ってくれているのだと感謝の念でいっぱいになります。お地蔵さまは、人々を見守るだけでなく、悲しみを救済することも役目のひとつなんですね。どんな願いをするかは、皆それぞれあると思いますが、自分自身の事だけではなく、他の皆が幸せになるように願うことが、お地蔵さまの願いなのだろうと思います。
役割がちゃんとあると認識すると、これから旅先でお地蔵さまに出会ったら、素通りしないで手を合わせてみるのも良いかも知れませんね。
(原口佳子)