年の瀬に、私たち夫婦が尊敬しているご夫婦を訪ねました。
ご主人が陶芸家で、奥様がお茶の先生をされています。日本中の草木に興味を持たれ、ご自宅の広い庭にはたくさんの珍しい草花や木を植えていらっしゃいます。上を見上げて「これはね、榎(えのき)と言って昔は一里塚として植えられていたの」、「これは楸(ひさぎ)の種類でお正月にも活ける子孫繁栄の木。」と言いながら枝を折って私にも分けてくれました。
「お正月前から玄関に柊(ひいらぎ)を置いて、立春になったら椿(つばき)と替えてあげるの。そうすることで魔除けになります」と、案内しながら色々話してくれました。
木へんに春で「椿(つばき)」。ツバキ科の常緑高木の総称で、果実からツバキ油を採取します。
木へんに夏で「榎(えのき)」。ニレ科の落葉高木で初夏に淡黄色の雌花と雄花をつけ、秋には橙色で小豆の甘い実を結ぶ。江戸時代、道しるべとなる一里塚に目印として植えられていたようです。‘ええ木’なんですね。木へんに秋で「楸(ひさぎ)」。楸(ひさぎ)はきささげの古名でノウセンカズラ科の落葉高木。10月頃ササゲに似た細長い蒴果をつけます。果実は煎じて利尿剤に利用できるようです。
木へんに冬で「柊(ひいらぎ)」。木犀(もくせい)科。古くからその鋭いトゲによって邪気を払う木とされ、2月の節分には柊の枝葉を戸口に立てて、その葉っぱのとんがりで鬼を追いはらう慣習が残っています。
まさに四季を彩る木々です。
もちろん漢字を組み合わせて意味を持たせた植物は、これだけではないと思います。
木へんに四季を表わす漢字がある、という再認識が出来ました。
お訪ねしたご自宅は、緑に囲まれた静かな田舎に在ります。窯もあり、家の中から眺める庭の景観は落ち着きがあり、風情があります。夏の夕暮れに訪れた時は、クーラーとか扇風機ではなく、ガラス戸を開け、ろうそくの灯でのおもてなしでした。今回はなんと、火鉢を囲みながら奥様がたててくれたお茶で歓待をうけました。
草木の歴史を踏まえた話を日本内外でお話しをされている奥様と、陶芸で活躍のご主人は、とても素敵なご夫婦です。私たちはお二人から興味深い話や、刺激をいただく為に1年に1度ご自宅を訪問させていただいています。
知識と知恵をおすそ分けしていただけるのがとても嬉しいです。
(原口佳子)