あるお客さまに「変わらないのは、上司(管理者)のマネジメント方法ですね・・・。」
と、言われて「ハッ」とした経験がある。変わっていないのは、自分自身のものの見方や接し方だったのではないかと。セミナーの中で は、「自分の考えを押し付けずに、意図を持って部下に問いかける・・・、傾聴が大切・・・」などと言いながら、実際には部下が自分の思い通りに動くように指示を出していることが多かった。さらに、「最近の新入社員の傾向は・・・、平成生まれの若者の言動は・・・、ゆとり・・・」などと口に出している。まさに禁句である。
育成を目的に部下(の言動)を良い方向に変えようとすることは当たり前であるが、部下を変える前にまずは自分自身が変わる、部下に対する見方や接し方を変えることが大切である。マネジメントの方法も世代や場面に応じて変えなければならないのは当然である。
突然ですが、「部下と対話していますか?」
最近は、コミュニケーション手段にメールを活用することも多いが、わざわざ隣の席の人とメールで会話をすることにはかなりの違和感がある。確かに効率的に仕事は進むかもしれないが、直接面と向かった「対話」がない職場では、真意が伝わらずに結果的に生産性を落としてしまうことも考えられる。「対話」とは上司と部下との信頼関係を前提に、お互いの考えやその背景、感情を理解することと言える。部下に一方的に指示するマネジメントが簡単ではあるが、部下の話を聴き、その意図を理解し、「頑張ろう!」という内的動機付けにつなげるためには「対話」によるマネジメントが欠かせないのである。
アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)教授であるダニエル・キム氏が提唱している「組織の成功循環モデル」がある。我々は結果(成果主義)を重視しがちであり、とくに営業部門では数字を求める。しかし、「結果の質」を問い詰めるだけでは組織は悪循環に陥りやすい。「結果の質」を上げるためには、その手前の「行動の質」を上げることであり、「行動の質」を上げるためには「思考の質」を高める必要がある。「思考の質」は「関係の質」を上げることで高まるという循環である。つまり、「関係の質」(お互いの関係性が良く、認め合っている)を上げることが組織の成功循環を生み出すスタートであり、その手段として「対話」が重要なのである。
世代や場面に応じてマネジメント方法を変える。コーチング、カウンセリング・アプローチ、PDC“F”Aマネジメント・・・、どれも「対話」=コミュニケーションスキルが基本であるが、周りで起きている変化に適応するためにも、上司(管理者)自身のものの見方、接し方が変わり、学び続けることが求められる。
パフォーマンス・コンサルタント 菊池 政司