今月の視点
NEW 2024.11.01 - [LEARNING SHOT] - 「敬天愛人」
旧庄内藩の藩主であった酒井忠篤とその家臣たちによって編纂・発行された『西郷南洲翁遺訓』という本がある。なぜ、薩摩から遠く離れた奥羽庄内藩の殿様と家臣が、このような書物を編纂したのであろうか。事の経緯は、以下の通り。
幕末、徳川幕府から江戸市中見回りの命を受けていた庄内藩は慶応三(1867)年、「テロの巣窟」である薩摩藩邸を焼き討ちにする。この件で薩摩藩では浪士を入れて64名が命を落とした。
明治元(1868)年、戊辰戦争で幕府方の庄内藩は薩摩藩を中心とした新政府軍を迎え撃ち、善戦の末降伏した。焼き討ちの遺恨により庄内藩主と重臣たちは切腹を覚悟した。しかし、参謀の黒田清隆は庄内藩主に礼儀を尽くし、家臣たちにも寛大な処遇をした。後に、この処遇は西郷隆盛の指示によるものであることが判明した。
感激した藩主の酒井忠篤は西郷隆盛に親書を送り、明治三(1870)年には藩主以下70数名が鹿児島を訪れた。彼らは西郷から兵学を学び、幾度も西郷と接する機会を持った。そして折に触れ、西郷が語った言葉を帳面に書き写したり覚えたりした。この旧庄内藩士たちによる一連の聞き書きが、『西郷南洲翁遺訓』である。
この『西郷南洲翁遺訓』は四十一条と追加の二条でできているが、その二十一条に「道は天地自然の道なるゆゑ、講學の道は“敬天愛人”を目的とし、身を修するに克己を持って終始せよ」とある。西郷は、この“敬天愛人”を座右の銘とし、自己修養のための指針として“天を敬い、その哲理に従い、自分を愛すると同様に他人を愛する”ように生きた。
実業家の稲盛和夫は、「西郷南洲翁遺訓」にはリーダーのあるべき姿が語り尽くされていると語り、自身の人生、経営の指針として同書を紐解いていた。そして、自身が創業した京セラの社是を「敬天愛人」としている。
「放勲欣明 文思安安」、「敬天愛人」、まさに西郷南洲である。
ラーニング・システムズ
高原コンサルティングオフィス
高原 要次
LEARNING SHOT 記事一覧
NEW 2024.11.01:「敬天愛人」
2024.10.01:「当たるも八卦、当たらぬも八卦」
2024.09.01:「中村天風」
2024.08.01:「穀霊、地霊、祖霊」
2024.07.01:「日本人の礼儀(幕末明治の外国人が見た日本)」
2024.06.01:「美しい」
2024.05.01:「劣化する日本人」
2024.04.01:「TO BE GOODを」
2024.03.01:「スマホ脳 ― 人類の進化の観点から ―」
2024.02.01:「運は100%自分次第」
解決への手掛かり 記事一覧
2018.11.01:2018年11月 『アウトプット力向上の秘訣は“明確さ、簡潔さ、インパクト”②』
2018.08.01:2018年8月 『アウトプット力向上の秘訣は“明確さ、簡潔さ、インパクト”』
2018.05.01:2018年5月 ”新人を伸ばす営業コーチング”
2018.02.01:2018年2月 人生100年時代 伸ばすスキルは“性格スキル!”
2017.11.01:2017年11月 GTD®メソッドが生産性を飛躍的に向上させる!
2017.08.01:2017年8月『マネジメント能力のアップ』“部下・若手に合わせた指導・育成”
2017.05.01:2017年5月 『働き方改革』“長時間労働解決の決め手は仕事の整理術にあり!”
2017.02.01:2017年2月 『Sales Performance System』④ “面談の実際”を見るフィールドサポート
2016.11.01:2016年11月 『Sales Performance System』③ “面談の締めくくりがヒット率の向上につながる”
2016.08.01:2016年8月 勝つ営業、成果の出る営業『Sales Performance System』② “売る営業から選ばれる営業へ”
くつろぎの空間 記事一覧
2018.09.03:2018年9月 “暑い夏と白い百合”
2018.06.01:2018年6月 “それが “魂” のプログラム”
2018.03.01:2018年3月 “感 謝 状”
2017.12.01:2017年12月 “兄弟のような教授と助教授”
2017.08.29:2017年6月 “長崎市名誉市民第1号”
2017.06.01:2017年6月 “8月の蜂”
2017.03.01:2017年3月 “長寿祝い”
2016.12.01:2016年12月 “大事な存在”
2016.08.31:2016年9月 “還暦の年、感動の8月”
2016.06.01:2016年6月 “野菜つくり7年目”